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「僕たちは歩いてゆく。」第十六話(最終話):戻った日常
2018/07/09 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
何気ない毎日が戻った。朝起きて、寝ぼけた頭でニコニコ動画を見て、ネットサーフィンをして、風呂に入って、電車に揺られて大学に行って。 何も変わらない。変化のない毎日。だけどそこには、確かな何かがあった。 ...
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「僕たちは歩いてゆく。」第十五話:旅の終わり
2018/07/07 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
「……あ、あれ」 旅の終わりは、唐突だった。細かく言うとそうではない。ドリームランドの終わりは、唐突だった。 「ねえ、あれって民家じゃない?」 伊狩さんが指差した方向には、確かに家があった。それだけな ...
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「僕たちは歩いてゆく。」第十四話:鬼ごっこ
2018/07/05 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
旅をする意味を、旅をしている間に考えるということは、思えば無粋なことであり、そもそも考え当てられるものではない。初めに用意できなかった意味は、全て終わった後に出てくるものであり、その途中で見出すことは ...
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「僕たちは歩いてゆく。」第十三話:どうして人は生きなくちゃいけないんだろう
2018/07/03 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
皆がやっと追いついてきて、とりあえずそこで少し休憩をとろうという話になった。 「私、ちょっとあっちまで行ってきてもいいですか?」 「いいよ。落ちるなよ」 ぱつ子はどこか楽しそうに、断崖絶壁の方へ移動す ...
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「僕たちは歩いてゆく。」第十二話:太宰だってプロレタリア
2018/07/01 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
「そういえばさ、佐多美月とか佐多加奈子って名前、どこから出てきたんだろうな?」 二日目の昼。長い長い道は、気づけば川のほとりを並走するように折れ曲がっていた。断崖絶壁の上を歩くような感じになっている。 ...
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「僕たちは歩いてゆく。」第十一話:夜の会話、プロレタリアってなんだろう
2018/06/30 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
「確かにそれは気持ち悪いですね」 おかしいのは、いくら歩いても疲れないし、眠くもならなかったことである。普段歩くという行為をしていないにも関わらず、けだるさもない。 夜の帳が落ちてきて、そろそろ宿を探 ...
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「僕たちは歩いてゆく。」第十話:本当に、気持ち悪い
2018/06/28 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
ドリームトレインの到着は、本当に唐突なものだった。アナウンスもない。気がついたら電車は停止していて、ドアが自動的に開いていた。 ドアの向こうには森が広がっていた。吹いてくる風が冷たい。秋というよりは、 ...
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「僕たちは歩いてゆく。」第九話:日常の中の非日常
2018/06/26 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
「先生、一言だけいいですか」 「なんだい、平岡?」 「いやね、いろいろと突っ込みたいところが満載なんですけどね」一度深呼吸してから、言った。「どうしていつもの教室に続くはずのドアが、車内に繋がっている ...
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「僕たちは歩いてゆく。」第八話:ドリームトレイン
2018/06/24 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
出発の朝は、あいにくの曇り空だった。風がないのがせめてもの救い、しかし首元をマフラーなどで隠さないと背筋に寒気が走りそうな、そんな陽気だった。 集合場所はなぜか大学の校門前。先生が言うには『ここからド ...
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「僕たちは歩いてゆく。」第七話:ドリームランド
2018/06/22 -僕たちは歩いてゆく。, 長編小説
数分もしないうちに、一人の女性がひょいと顔を出した。先生が嬉しそうな笑みを浮かべたので、きっとこの人が先ほどの電話の主なんだろう。 それにしても先生、結構キレイな女性をはべらせていらっしゃるようですね ...